9.26.2013

傷に瞬間接着剤 “THE EAST”



スコット・フリーが送り出すこの作品は、 “Anotehr Earth”で注目のブリット・マーリングを主演に迎え (脚本にも参加) 、 若手のザル・バトマングリッジは演出の力量もあり、 予想外に見応えのある映画だった。

以前にタンカーの事故で、 流出した石油まみれの海鳥を覚えている人も多いのではないかと思うが、 冒頭にあの映像が置かれる。 "ジ"・イーストという組織はエコ・テロリストとも呼ばれ、 その石油会社社長宅の空調ダクトに石油を流し込んだりする活動をしている。 ドバイにあるTHE EASTの拠点にスパイが潜入するが、 送り込むのは政府系機関ではなく、 テロのターゲットとなる企業をクライアントに持つ民間企業。

ブリット・マーリング演じるサラはこのアンチ・テロ企業ヒラー・ブルードの優秀なエージェントだったが、 同時に正しい心の持ち主で、 潜入しながらもTHE EASTにシンパシーを抱く。 すでに認可されているはずの薬に実はとんでもない副作用があり、 そのことを隠しながら金儲けを続ける製薬会社のパーティで、 重役たちのシャンパンに自社の薬を盛る手伝いをする。

自分の立ち位置に苦しむサラは、 最後に意外な選択をする。 サラのその後はエンドロールの前にさらっと描かれるだけだが、 資本主義のあり方を憂う大真面目な作品を青いと感じるか、 感銘を受けるかはあなた次第だろう。 来年公開予定、 乞うご期待。 エントリータイトルは正統な医療の裏技とのワンシーンより。




ザ・イースト THE EAST (2013) 日本公開2014.1/31 公式サイト
脚本・監督 ザル・バトマングリッジ 
ブリット・マーリング (脚本共著)  エレン・ペイジ 
アレキサンダー・スカルスガルド パトリシア・クラークソン 

9.24.2013

メタボな兄さんが好き “YOUR SISTER'S SISTER”



いくつか賞も取ったり、 IMDbではある人に "LOVE, LOVE, LOVE" などと言わせ、 またある人には "Who cares?" と言わせる作品。 日本ではみごとに未公開DVDスルーだが、 とりあえず見てみた。 概ね自分的にはIMDbの後者に近かったが、 そのくせ後でキャストの表情などが思い出される微妙な映画。

恐らくは監督の実体験がベースなのだろう。 死んだ恋人の兄さんが密かに好きで・・ 兄さんにとっては義理?の妹だが実はかなり気になっていて、 その姉はレズビアンでベジタリアン、 でも子どもだけは欲しいという、 まあ・・ な設定、 で三者がからむとベタ邦題の通りトライアングルではあるが、 べったり三角ではなくて2.5角形くらい。

シチュエーションがあまり変わらないので、 いかにも低予算のインディーズ作品だし、 演劇的かつ、 どこか昼メロ的でもあるが、 一昔前であれば尖った設定なのかもしれない。 しかし、 すっかりコモディティ化し陳腐ですらあるそのやりとりは、 逆にまったり見れると言うか、 LOVE, LOVE.. と言わせるのもわからなくはない。

まあそんな感じの ビミョ━(´・ω・`)━!! な作品。 自分では進んでるつもりの地味可愛い女の子にお薦めすると受けそうだ^ ^



ラブ・トライアングル YOUR SISTER'S SISTER (2011) 日本未公開
脚本・監督 リン・シェルトン 
エミリー・ブラント マーク・デュプラス ローズマリー・デウィット 
[DVDはレンタルのみ?]

9.21.2013

ナディア13才 girl model



シベリアあたりでは今日もオーディションが行われ、 モデルの卵が発掘され、 その若さと美しさは、 若い無垢な心と引き換えにたっぷりと外貨を稼ぐ・・ はずだったのが実はそうではない。 日本公開はまずないだろうし、 DVDスルーされるかも危ういドキュメンタリー作品ではあるが、 面白そうだったので見てみた。

オーディションを主催しているのは元モデルの女性で、 1999年頃、 日本で仕事をし、 その後はモデル育成にあたっているとのこと。 大勢のなかから受かったナディアは13才で、 細い身体とソバカスの素顔。 家族は祝い、 彼女を東京へ送り出す。

しかし東京に着いてからは右も左も、 言葉もわからず、 狭いアパートに住んで日本のクライアントのオーディションを受ける毎日。 仕事はいっこうに決まらず、 ホームシックで泣き、 結局は20万円ほどの負債とともに送り返される。

オーディションする側の経験が少しはあるのだが、 こんな子たちだったんだな。 自分の好みで選ぶわけにはいかないから、 いちおうコンセプトだのに乗っ取ってクライアントとあれこれ言いながら決めるのだが、 日本の企業はわかったような、 わからないようなだから、 選ばれる側は何でもいいから早くしてくれと、 ひたすらそういう気分だったに違いない。

さらに時代の変化とともにファッションビジネスの中心が移る。 パリなどは揺るぎない中心だろうが東京は勢いがなく、 ナディアはその後も借金返済のため台湾や中国へ行った、 とのテロップで終わる。 人身売買的なモデルビジネスを告発してるのかと思いきや、 もっと冷めた話で、 この下がり切ったテンションが心地いいとも言える^ ^

泣ける映画、 とか言って感情を盛り上げるだけが映画ではなく、 非常に冷めた視線で物事を切り取るのも映画の得意技だということをあらためて知る。 英語字幕の乗るロシア語と日本語なので、 興味ある方は輸入版ででもぜひ。



girl model (2011) 日本公開未定 
監督 David Redmon+Ashley Sabin

9.18.2013

超・格差社会^ ^ 「エリジウム」



時は2154年、 地球は環境汚染が進み、 富裕層はエリジウムと呼ばれる人工の環境に移住している。 地球に残された貧乏人はロボット警官につつかれ、 エリジウム資本の会社にこき使われながら、 病気で死んでいく子どもに何もしてやれない。 エリジウムではカプセルに入るだけでガンすら治るというのに。

第9地区」 に続き、 再びブロムカンプの痛烈な設定が冴えるSF。 マット・デイモン演じるマックスはアーマーを体にボルト留めされ、 脳に直接データをダウンロードしたりと、 懐かしいサイバーパンク調でもある。

エリジウムという巨大な宇宙ステーションの、 回転の遠心力=重力という環境に作られたビバリーヒルズはわかりやすいし、 宇宙ステーションの上のパームツリーやプールという風景にも圧倒される。 しかしながら痛烈なのは設定だけで、 後半はアクション中心となる。 そのあたりも含めメジャーになった分、 薄味になった気がしなくもない。 ブロムカンプ監督には、 ありがちな流れに呑まれないで、 設定書き替え・再起動してほしいところだ^ ^ 乞うご期待。



エリジウム ELYSIUM (2013) 日本公開9/20 公式サイト・予告
監督 ニール・ブロムカンプ  象のロケット 
マット・デイモン ジョディ・フォスター シャールト・コプリー 
アリシー・ブラガ ディエゴ・ルナ ワグネル・モウラ 

9.10.2013

無免許悪魔払い 「死霊館」



物語は70年代に起きた実話だそうで、 ちょっと懐かしい感じのオカルト映画。 ジェームズ・ワンはそういう方向へ行っちゃうのだろうか。 しかし古い写真をみつけたようなコワさと、 前半はやや地味ながら後半はなかなかの迫力で、 それなりに満足感のある作品だ。

ある家族がヤバい家を買っちゃう。 引っ越しの日、 犬が家に入ろうとしない。 家じゅうの時計が3時7分で止まる。 夜中に物音、 イヤな臭い。 隠し部屋がみつかる。 不気味なオルゴール・・ とアイテムはきわめてクラシック。

片や、 超常現象研究家と霊能者のカップル。 二人は大学で講義したり、 過酷なミッションをいくつも経験してきた。 infestation, oppression, possessionと悪魔憑きは3段階で進行するという。 二人にも娘がいる。 必死の思いで相談を持ちかける例の家の母、 応える二人。

まずは科学的な調査から始めるが、 霊能者の妻にはすでに見えてしまっている。 調査の結果、 呪いは魔女狩りの時代までさかのぼり、 多数の霊がいるが、 それだけでなく、 大ボスである悪魔をこの土地から払う必要があるという。 証拠を集めて教会に申請するもバチカンの許可が必要と言われる。 その間にも憑依は進行、 さらには二人の娘にまで危険が及ぶ。 変わり果てたXXを前に、 もう一刻の猶予もない。 さあ、 どうする?・・

エントリータイトルはややネタバレだが、 まあこれ以上は触れず。 クラシックななかにも新鮮味のある展開と言えるだろう。 曲はゾンビーズ“Time of the Season”などやや60年代寄りのものが少し流れる程度だが、 音の効果もクラシカルで重々しい感じ。 ハロウィンに向けて乞うご期待!



死霊館 THE CONJURING (2013) 日本公開10/11 公式サイト・予告 
監督 ジェームズ・ワン  象のロケット 
ヴェラ・ファーミガ パトリック・ウィルソン ロン・リヴィングストン 
リリ・テイラー 

9.06.2013

命日の誤植 「ダークホース」



ソロンズの前作はDVDスルーもされていないようだが、 何の手違いか今回はいつの間にか公開されていた。 寒いサブタイトル付きで。 何だ? リア‘獣’って。

両親からダークホースとして期待されていた兄だが、 弟は医者になって立派にやっているのに、 兄の方は父親のコネで会社勤め、 おもちゃ集めを卒業できないまま中年を迎えつつあった。 もちろん同居で独身。

そんなエイブも現実をしっかり把握していて、 打開しようともがくが夢とも幻想ともつかぬレイヤーのなかで 「俺は夢より、 この現実がいい」 と語るも、 それすらすでに生前の幻・・ それは “返品も交換も払い戻しもできない” 自分の人生であった。

よくまあ、 これだけシンキくさい話が書けるものだと感心する。 そのくせ自分はけっこう好きな監督の一人だが、 ソロンズの健在を確認して、 まずまずのハピネス。 布団をかぶって一人泣きたい夜などに、 ぜひ^ ^ エントリータイトルはラストシーンより。


ダークホース リア獣エイブの恋 DARK HORSE (2011) 日本公開2013.3 公式サイト
監督 トッド・ソロンズ 
ジョーダン・ゲルバー セルマ・ブレア ジャスティン・バーサ 
ドナ・マーフィ ミア・ファロー クリストファー・ウォーケン