4.08.2015

一人目覚め、暗躍する者 Nightcrawler



警察無線を傍受して事件現場にいち早く駆けつけ、映像を撮影し、それをテレビ局に売るという商売をしている人たちをナイトクローラーと呼ぶそうだ。スクープとかエクスクルーシブと言われるものも、たいていは偶然に撮られたものではなく、こうした業者の下支え、あるいは暗躍があってのことらしい。合法かどうかも怪しいグレーゾーンな映像を数百ドル単位で買い取る局側も、過酷な視聴率競争、あるいは自分が生き残れるかどうかという必要性に迫られての予算内の出費だ。

盗んだ金網を鉄クズとして売って日々をシノいでいるルイス・ブルーム。経歴は不詳だが、頭はよくて低学歴なタイプか。ある日、事故現場を通りかかる。そして、そこにハイエナのようにたかってはケガ人を撮影する一団を見る。ふと思い立って、自分もこれをやろうと考える。盗品の自転車をビデオカメラに換え、事件現場に向かう。新参者は小さなカメラを笑われ、それでもアグレッシブに対象に迫る。買ってくれる局がみつかり、警察無線のコードナンバーを理解したりとスキルを高める日々。やがて大きなチャンスが訪れ、リスクを取って勝負に出る。

当然ながら日の当たる職業ではないものの、ルイス・ブルームを一人の起業家と見ることもできる。マーケットニーズ、自己の適正の把握、新規参入、差別化、大きい物にも巻かれず、むしろ弱みにつけ込んで適正なパートナシップを結び、かつて被雇用者としては落第だった自分が雇用する側に回ると、搾取がここまで上手だったなんて。

そういう部分に共感してかどうかはわからないがIMDbでも評価は高く、自分的にもなかなかいい線をついた作品だと思う。こうした考察がないと微妙なユーモアとカーアクションだけでしかないとも言えるが、ジェイク・ギレンホールの冷たく燃えるキモさ加減もちょうどよく、就活を勝ち抜いてフレッシュマンとなり、ちょっと社会の裏が見えて冷めたような、逆に燃えてきたような人に、この夏ぜひ見てほしい映画?だ。



ナイトクローラー(原題) Nightcrawler (2014) 日本公開2015夏予定
監督 ダン・ギルロイ 
ジェイク・ジレンホール レネ・ルッソ リズ・アーメッド ビル・パクストン